選挙期間は、有権者に自分の存在や頑張りを印象付けられる貴重な時期です。
この時期にどれほどアピールできるかによって、当落が決まると言っても過言ではないでしょう。
では、これほど貴重な選挙期間をどのように過ごせば良いのでしょうか。
本記事では、選挙期間に注意すべきことを3つお伝えします。
今までの頑張りを当選につなげるために、参考にしてみてください。
※本記事は、選挙プランナー松田馨氏の著書『地方選挙必勝の手引(増補改訂版)』(2022年9月30日発刊)の内容を、許可を得たうえで使用・引用しております。
【注意点1】「休息=戦力回復」の意識を持つ
過酷な任務にあたる自衛隊では、休息を取ることを「戦力回復」と呼ぶそうです。
(参考:PRESIDENT Online『なぜ自衛隊は「休むこと」を命令するのか』)
この考え方は「人は疲労し、疲労が人のパフォーマンスを低下させる」ことを前提としています。
能力を維持したまま活動を継続するには休息が必要です。
政治活動は朝早くから夜遅くまで続きますので、だんだんと睡眠不足になり体調を崩す方もいらっしゃいます。
ある地方議会議員選挙で、候補者がインフルエンザにかかってしまい、選挙期間中に 1 日も活動できなかった陣営がありました。
もちろんその候補者は落選しています。
候補者は誰よりも頑張っている姿を見せないといけない立場なので無理をしがちです。
しかし、選挙期間中に体調を崩してしまったり、疲労の蓄積によって元気がなくなり有権者からの印象が悪くなってしまったりするようでは本末転倒です。
「体調管理も候補者の仕事」「休息は戦力回復」という意識を持って、適度に休みを取りましょう。
休みの取り方として、例えば以下のような方法が考えられます。
- 朝の駅立ちの後に仮眠を取る
- 暑い日中に仮眠を取る
- 駅立ちのある日は早めに就寝する
- 1 日休日を確保する
政治活動期間の後半は疲労の回復も意識し、特に選挙期間中は元気いっぱいに活動ができるようスケジュールを組みましょう。
【注意点2】ミスやクレームに深刻になりすぎない
政治活動をしていると、様々なクレームや心無い批判を受けることがあります。
第 1章でもお伝えしたように、心構えとして、そうした誹謗中傷を受ける可能性があることは想定しておきましょう。
こちらに非があった場合は、非を認めて謝罪をするなどの丁寧な対応が基本になりますが、心無い批判についてはあまり気にせず、無視するのがおすすめです。
よくあるミスには以下のようなことがあります。
- 相手の名前を間違える
- 肩書きを間違える
- 亡くなられた方に郵送してしまう
ミスをいつまでも引きずってしまったり、ミスを恐れて郵送を控えたり、働きかけを控えたり……ということになっては本末転倒です。
こういったミスをゼロにすることは現実的にはなかなか難しいものです。
ミスをなくすよう努力はしつつ、起こってしまった時にすぐに謝罪をする、再発防止を徹底するなどして、活動を止めないようにしましょう。
【注意点3】誹謗中傷には堂々と対応する
政治活動を続けていくと、クレームではなく、明確にあなたの足を引っ張るために根も葉もない噂を流されることもあります。
泡沫候補の足を引っ張る必要はありませんから、誹謗中傷などの悪い噂を流されるということは、他の候補者や陣営の人たちにとって、あなたの存在が一定の脅威になっているということです。
特に新人の方は、自分が有力候補と認識されたのだと思って、気にしすぎないようにしましょう。
その上で、
- どういった噂が流れているのかを把握する
- 候補者とスタッフ間で対応を決める
- 支援者に否定をする時は誰にでも同じ回答をする
- 支援者の方々に火消しをお願いする
というのが基本的な対応になります。
候補者やスタッフが動揺している様子が伝わると「悪い噂は本当なのか ?」と支援者が不安に思ってしまいます。
笑い飛ばすくらい堂々とした対応を心がけることと、候補者もスタッフも同じ回答で否定することがポイントです。
人によって否定の仕方が違うと混乱を招くことがあります。
みんなが口を揃えて同じ内容で否定していれば、支援者も安心するでしょう。
選挙では様々な情報がまわりますので、良かれと思って悪い噂やマイナスの情報を持ち込む人もいます。
候補者の耳にあまりにもそういった情報が入ると、ストレスになってしまいます。
基本的には事務所のスタッフが対応し、それ以上広げないように注意しましょう。
選挙には怪文書がつきもの!その見分け方は?
誹謗中傷やデマで候補者を貶める手段として、選挙では「怪文書」と呼ばれる文書が配布されることがあります。
怪文書は、特定の候補を貶める目的で作成されるもので、従来は候補者の金銭トラブルや異性関係の話などが記載されているのが一般的でした。
怪文書が出回る頻度は 1 回の選挙につき多くて 2 回程度です。
しかし2000 年に田中康夫さんが初めて長野県知事選挙を戦ったときには、実に 20 種類もの怪文書が登場したそうです。
また、怪文書はこれまで郵送やポスティングでの配布が中心でしたが、最近はインターネット上にも出回っています。
ここで怪文書の見分け方について簡単に説明します。
ビラの発行元が書かれていなかったり、書かれていても連絡先の電話がつながらなかったりする場合は怪文書にあたると考えられます。
個人を貶めるような内容ばかり書いてあったり、事実かどうかの確認ができない内容が書いてあるものも、怪しいと思って良いでしょう。
例えば、語尾が「〜そうです」や「〜ようです」と書いてある場合は、事実と断定できない内容を書いていて信ぴょう性に欠けると判断すべきです。
ネガティブキャンペーンとは?世界と日本における風潮の違い
本来「ネガティブキャンペーン」と「怪文書」は別物です。
元祖・選挙プランナーである三浦博史氏によれば、ネガティブキャンペーンは「相手候補の政策や政治姿勢、さらには人格上の欠陥や問題点を事実に基づいて指摘批判し、主に有権者の信頼を失わせて自分たちを有利に導こうとする選挙戦術のこと」とされています。
ネガティブキャンペーンの本場アメリカでは、事実に基づいた容赦ない批判(誹謗中傷ではない)が繰り広げられてきました。
日本では「ネガティブキャンペーン」という言葉から、事実かどうかには関係なく、とにかく相手候補を誹謗中傷するイメージを持たれています。
また、批判の内容が事実に基づいていたとしても、公然と相手を批判することが「個人攻撃」として嫌がられる風潮があります。
特に女性からの反発が強いことから、日本の選挙現場では有効なネガティブキャンペーンの実施は困難でしょう。
最近では、既存のメディアに対する信頼度の低下やSNSの普及を背景に、2016 年の英国の EU 離脱(ブレグジット)における「ポスト・トゥルース(※1)」や、トランプ元大統領が誕生したアメリカ大統領選挙における「フェイクニュース(※2)」など、従来のネガティブキャンペーンとは異なる社会現象が話題となりました。
こうした虚偽の情報がすぐに拡散されてしまう状況の中で、対抗手段として「ファクトチェック(※3)」と呼ばれる手法も広がりを見せています。
2022 年の第 26 回参議院議員通常選挙において、認定 NPO 法人ファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)が【参院選 2022 特設サイト】を開設して関連情報のファクトチェックを公開するとともに、安倍晋三元首相銃撃事件に関する誤情報・偽情報の拡散を防ぐために注意喚起を行っていました。
※1 ポスト・トゥルース 世論形成において、客観的な事実より、虚偽であっても個人の感情に訴えるものの方が強い影響力を持つ状況。事実を軽視する社会。直訳すると「脱・真実」。 引用元:コトバンク ※2 フェイクニュース 虚偽の情報でつくられたニュースのこと。主にネット上で発信・拡散されるうその記事を指すが、誹謗(ひぼう)・中傷を目的にした個人発信の投稿などを含む場合もある。 引用元:コトバンク ※3 ファクトチェック 政治家らの発言内容を確認し、「正しい」「間違い」など、その信憑性を評価するジャーナリズムの手法。米国ではファ クトチェック専門の政治ニュースサイトも存在する。 |
法的手段も含めて毅然とした対応を
噂やネットでの誹謗中傷、怪文書、フェイクニュースなどへの対応は、私も毎回頭を悩ませるところです。
特に、否定するにも噂がたいして広がっていない状況だと、わざわざ自分で取り上げることで、誹謗中傷の内容を知らない人にまで広げてしまうというリスクがあります。
しかし、放置すると一部の有権者は虚偽の情報を信じてしまい、候補者のイメージダウンにつながってしまいます。
対抗策としては、法的手段に訴えるのも有効です。
2018 年の沖縄県知事選挙において、玉城デニー氏がネット上での自身に関するデマを、名誉毀損で刑事告訴の手続きに入ったことが大きなニュースとして取り上げられました。
(参考:沖縄タイムス(2018年9月11日)『ネットの「デマ」、名誉毀損で刑事告訴へ・翁長氏・後継・玉城デニー氏』)
弁護士に依頼して法的な手段に出ることを記事にしてもらい、広く知ってもらうことで「デマが流れている」という情報も有権者に伝わります。
実際に刑事告訴が受理されて犯人が逮捕されることがなくても、良い防衛策だったのではないでしょうか。
こうした法的手段に訴える場合には、名誉毀損だけでなく、「虚偽事項の公表罪」も考えられます。
公職選挙法 第 235 条第 2 項を見てみましょう。
第二百三十五条第二項 当選を得させない目的をもつて公職の候補者又は公職の候 補者となろうとする者に関し虚偽の事項を公にし、又は事実をゆがめて公にした者は、 四年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。
このように、虚偽の情報だけでなく「事実をゆがめて公にしたもの」も、虚偽事項 の公表罪の対象になっています。
もちろんネット上のものも含まれますので、悪質なものがあれば弁護士に依頼して刑事告発をする、刑事告発の手続きに入った事実を公開するのも一手です。
ただ残念ながら、こうした弁護士への相談やマスコミ対応には一定の労力と時間、 そして費用がかかってしまいます。
本来であれば、全ての力を有権者へのアピールに 使いたいところなのですが、無視するわけにもいかないのが難しいところです。
個 人的には、こうした誹謗中傷やデマについては罰則を強化し、警察にもしっかりと取り締まっていただきたいと思っています。
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