選挙必勝バイブル

選挙の現実とは?有権者が投票する基準や立候補のリスクを解説

  • 2023.08.17

「選挙費用はどのくらい必要?」

「選挙までのスケジュールの決め方は?」

「立候補すると、どのようなリスクがあるのだろう?」

これから初めて選挙に立候補される方は、上記のように様々な不安を感じていると思います。

立候補の表明前に確認すべき項目は多く存在するものの、まずは選挙の現実を知ることが重要です。

そこで本記事では、「有権者が候補者に投票する基準」や「選挙へ立候補する3つのリスク」を解説します。

※本記事は、選挙プランナー松田馨氏の著書『地方選挙必勝の手引(増補改訂版)』(2022年9月30日発刊)の内容を、許可を得たうえで使用・引用しております

有権者は何を基準に投票する?理由や調査結果もあわせて解説

選挙で当選するためには、他候補よりも多くの票を獲得し、定数内の順位に入る必要があります。

そのため候補者(立候補予定者)は、一票でも多くの票を集めるために様々な活動をおこなっていくことになります。

では、有権者は一体何を基準に候補者を選び、投票しているのでしょうか ?

どんな選挙であれ、有権者は「知名度」を基準に投票することが多い

結論からお伝えすると、どんな選挙であれ、有権者は知名度を基準に投票することが多いです。

私はこれまで「有権者は何を基準に投票しているのかを解き明かし、必勝の策を練り上げたい」と思い、現場で問い続けてきました。

各種の世論調査の結果や学術的な研究論文なども読みました。その結果、行き着いた結論は「知名度」です。

選挙の種類や構図によって違いはありますが、どんな選挙であれ有権者からすれば「その候補者を知っているか、知らないか」というのがまず大きな基準であり、政策は二の次です。

結局は知名度こそが、候補者の得票を大きく左右する要素なのです。

国政選挙は政党を選ぶ選挙ですので、個人の知名度よりも政党の支持率が大きく得票に影響しますが、政党支持率の影響が少ない地方選挙では、まさに候補者個人の「知名度」が当落を大きく左右します。

では、なぜ有権者は「知名度」で投票するのでしょうか?

有権者が「知名度」を基準に投票する理由

有権者が候補者の知名度で投票する一番の理由は、乱暴な言い方になりますが「誰が政治をやっても同じ」だと考えているからです。

政治家が信頼されていないというよりも、多くの人はそもそも政治にそれほど不満がないのです。

「日本は世界的に見ても安全で治安も良く、安くて美味しいものが食べられ、貧富の差もそれほど大きくなく、水道水も飲めるし、経済も安定しているし、便利で快適で住みよい国だ」

あなたもこうした感覚をある程度理解できるのではないでしょうか。

もちろんコロナ禍による経済の落ち込みや、少子高齢化、所得格差、貧困の問題など課題は山積しています。

しかしながら、有権者の多くは、まだそれほど危機感を持っていないと感じます。投票率が低迷するのも、生活に大きな不満のない有権者が多いのが一因です。

私は市長選挙に関わることが多いのですが、現職が立候補している場合に「大きな失政もないし、いい人だから、もう一期やらせてあげればいい」という声を、全国どこへ行っても耳にします。

大きな不満がないから「(よっぽどひどくなければ)誰が政治をやってもいい」という感覚を持つ人が多いのだと思います。

そして「誰がやっても同じ」と考えている有権者にとっては、

  • 熱心にあいさつに来た候補者
  • 全く会ったこともない候補者

であれば、前者に投票する人が多くなってしまうのは当然のことでしょう。

「知名度」で投票する有権者が多いことは出口調査からも読み取れる

世論調査では「何を基準に投票しますか ?」という設問がよくありますが、回答の第1位は「政策」となっています。

しかし、あなたにしても、あなたの周りの人にしても、本当に立候補者や政党の政策を丁寧に読み比べて、政策を最優先に投票先を決めている人がいるでしょうか ?

実際に、投票が終わった後の出口調査で「なぜその候補に投票したのですか ?」という趣旨の質問への回答では、第1位が「人柄」に変わるという現象が見られます。

本当にその候補者の人柄をよく知っている人は少数ですから、候補者の総合力とも考えられますが、知名度の要素も大きいと考えられます。

こうした有権者の意識があるからこそ、選挙が知名度の争いになってしまうのです。

実際は、誰が政治をやるのかによって、その地域の未来や、住民の生活は大きく変わります。

私はそんな自治体をたくさん見てきました。だからこそ、本当にその地域を良くしたいという志と、能力のある方に政治家になっていただきたいとの思いでこの仕事を続けています。

しかし政治家になるためには、選挙に当選しなければなりません。

政策を軽視するわけではありませんが、当選するためには、知名度で投票する有権者が多いという「選挙の現実」を前提に、とにかく自分の名前と顔を一人でも多くの有権者に知っていただくという、地道で骨の折れる活動を継続していくことが基本になります。

【ここまでのまとめ】

  • 「誰が政治をやってもいい」と考えている有権者が多い
  • 投票の判断には政策よりも「候補者を知っているかどうか」が重要
  • 一票を得るための基本は「知名度を上げること」

選挙へ立候補する3つのリスク

選挙へ立候補するリスクについて、ここでは以下3つの内容に絞って解説します。

  1. 政治家という職業の社会的評価の低さ
  2. 政治家に聖人君子を求める国民性
  3. 制度や社会的援助の少なさ

選挙への立候補には、落選のリスクだけでなく様々なリスクがあります。それでは、順番に見ていきましょう。

リスク1.政治家という職業の社会的評価の低さ

繰り返される「政治とカネ」の問題や政治家のスキャンダルも影響し、政治家は国民からあまり尊敬されていません。

新人でこれから立候補を検討されている方は、多かれ少なかれ今の政治家に対して厳しい批判をされてきたのではないでしょうか ? 

その時の自分と同じ目線で、これからあなた自身が厳しく見られることになります。

小・中・高校生を対象におこなわれている「なりたい職業ランキング」というものがありますが、「政治家」は毎回トップ10の圏外です。

残念なことに「なりたくない職業ランキング」では上位にランクインすることも多く、第1位になった調査もあります。

中高生を対象に様々な職業を紹介する「13歳のハローワーク※1」では、以下のように解説されています。

政治家は、さまざまな集団・グループの利害の調整のための方法を考え、実行する。それは実はものすごく面倒くさくて、割の合わない仕事である。集団内のすべてのグループやすべての人が満足する政策などあるわけがないので、政治家は誰かに恨まれる。

※1 出典『13歳のハローワーク・公式サイト

私はこれまで、割に合わない仕事だとわかっていても、社会課題を解決するためにリスクを承知で選挙に立候補された方をたくさん見てきました。

悲しいことに、そうした方に対して、

  • 「お金儲けのため」
  • 「名誉欲のため」

と決めつけて、冷ややかな目で見る有権者や、今まで候補者がやってきた活動を「選挙に出るためだったのか !」と批判する有権者が一定数いました。

街頭で演説をすれば、知らない人から罵声を浴びせられたり、辛辣な批判を受けることもあると覚悟してください。

リスク2.政治家に聖人君子を求める国民性

2つ目は、政治家に聖人君子を求める国民性です。皆さんもよくご存知のとおり、日本では国会議員が不倫で辞職した事例があります。

アメリカでは、大統領がホワイトハウスで不倫をしたことを認めましたが、そのまま辞職することなく任期を全うしました。

日本では政治家の能力とはあまり関係なく、夫婦間や家庭内または当事者間で解決するべきプライベートな問題を、マスコミが大きく報じることで政治家が辞任まで追い込まれてしまう現実があります。

リスク3.制度や社会的援助の少なさ

3つ目は、制度や社会的な援助がほとんどないことです。

選挙に当選するためには、仕事を辞めて、数ヶ月〜1年は政治活動に専念しなければなりません。

その間の生活費も大変ですが、万が一選挙に落選した場合、元の会社に復職できる人はごく僅かです。

立候補にあたって、長期休職を認めている企業もゼロではありませんが、ごく一部の企業(株式会社パソナグループ、楽天グループ株式会社など)にとどまっています。

選挙の公営制度として、多くの自治体が選挙運動用ポスターやビラの作成費を負担する条例を策定していますが、供託金が高額なこともあり制度としては中途半端です。

また、「日本には寄附文化がない」と言われます。

日本ファンドレイジング協会の最新の調査(寄付白書 2021※2)によると、日本人の年間平均寄附金額は37,657円です。

※2 出典『日本ファンドレイジング協会・公式サイト

英国のチャリティー機関「チャリティーズ・エイド・ファンデーション(CAF)」の公表している世界寄附ランキングでは、総合順位で最下位となっています。

しかも、そのスコアは調査された国々と比すると非常に低いというデータもあり、選挙において寄附を募っても、なかなか集まらないのが現状です。

結局候補者は、自分で政治活動と選挙運動の資金を用意するしかないのです。

選挙への立候補がもっと容易になり、様々な年代・性別の方が政治家という仕事を選択できるような社会になればと願っていますが、現状ではこうした数々のリスクがあることも知っておいていただきたいと思います。

この記事をシェアする

Avatar photo

選挙ドットコム

年間1億PV・2500万人の利用者を誇る、 日本最大級の選挙・政治家情報メディア「選挙ドットコム」 累計4,000名以上の政治家にご利用いただいた ネット選挙最強ツール「ボネクタ」を提供中。 最新の選挙情勢やネット選挙ノウハウ情報を発信します。 万全の公職選挙法審査体制を有するネット広告の「ターゲティング広告」は累計1,000件以上・政治系では日本最大級の運用実績。

ボネクタ

ボネクタ