告示日からはいよいよ選挙戦がスタートします。
「良いスタートを切って勢いをつけたい」と考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
けれども初日である告示日にはやることも多く、トラブルが起こってしまうことも少なくありません。
そこで本記事では、「立候補の届出」や「出陣式」など、告示日にすることを具体的に解説します。
告示日の動きを細かく確認し、幸先の良いスタートを切りましょう。
※本記事は、選挙プランナー松田馨氏の著書『地方選挙必勝の手引(増補改訂版)』(2022年9月30日発刊)の内容を、許可を得たうえで使用・引用しております。
立候補の届出
告示日の午前8時30分から午後5時までが、立候補の受付時間となります。
事前審査が完了した届出書類を持って、受付開始10分前には届出場所に到着するのが基本です。
個人演説会を開催する場合は、個人演説会の届出書類も忘れずに持参しましょう。
届出の流れ
8時30分までに届出場所に到着した陣営は同着扱いになりますので、届出順を確定するためのくじ引きを行うことになります。
よく報道で出される「届出順」というのは、このくじ引きを経て決まった順番ということになります。
立候補の届出が無事に受理されれば、晴れてあなたも「立候補者」です。
立候補の届出受付作業の中で、選挙ポスターの掲示場所を定めた「公営ポスター掲示場掲示区指定所」という書類が交付されます。
あなたの選挙ポスターを貼る場所の番号が記載されていますので、すぐに写真を撮って、事務局長や担当者に送信しましょう。
選挙の7つ道具(5つ道具)とは
届出が完了すると、証明書と「選挙の7つ道具」が交付されます。
7つ道具とは、次のものを指します。
7つ道具 | 交付数 | 制限事項 |
❶ 選挙運動用自動車・船舶表示板 | 1枚 | 選挙カー(選挙船)に積み込んでいなければならない |
❷ 選挙運動用拡声機表示板 | 1枚 | 拡声器に取り付けるか、選挙カーで音響設備を使用する場合は積み込まなければならない |
❸ 自動車・船舶乗車船用腕章 | 4枚 | 専ら選挙カー(選挙船)で選挙運動をする車上運動員が着用しなければならない |
❹ 街頭演説用腕章 | 11枚 | 街頭演説に従事する選挙運動員が着用しなければならない |
❺ 街頭演説用標旗 | 1枚 | 街頭演説を行う時には必ず掲げなければならない |
❻ 選挙事務所の標札 | 1枚(2~4枚公布される都道府県もある) | 【知事選挙のみ】
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❼ 個人演説会用立札等の表示板 | 5枚 | 【知事選挙のみ】 個人演説会の看板類に表示しなければならない |
※国政選挙や知事選挙以外の選挙では❻❼がないため「5つ道具」とも呼ばれています
なぜこうした7つ道具(5つ道具)があるのかと言えば、公職選挙法で禁止されている行為とは?政治活動における規制も解説で説明したように、公職選挙法は選挙の公正を確保するために、選挙運動について時期・主体・方法などについての制限を設けているからです。
選挙管理委員会が交付する7つ道具(5つ道具)がなければ、一定の選挙運動を行うことができないようになっています。
例えば、選挙運動用拡声機表示板を紛失してしまうとスピーカーや拡声器が使用できなくなりますし、街頭演説用標旗を紛失してしまうと街頭演説ができなくなってしまいます。
7つ道具(5つ道具)は担当者を決めて、管理を徹底しましょう。
出陣式(出発式)
届出が完了し、7つ道具(5つ道具)が届いたらいよいよ選挙戦のスタートです。
幕で覆い隠していた選挙事務所の看板や選挙カーの看板を出しましょう。
その後は「出陣式(出発式)」を行うか、すぐに街頭宣伝活動に出ましょう。
必勝祈願祭を行う場合は出陣式の前に
必勝を期して、地元の氏神様を祀る神社で「必勝祈願祭」を行う場合もあります。
必勝祈願祭は、候補者とその親族、選対や後援会の幹部のごく少数で行います。
出陣式の前、早朝に行うのが一般的です。
出陣式の告知は「事前運動の禁止」に注意が必要
出陣式は、支援者の皆さんと心を新たに選挙運動の開始を宣言するイベントです。
選挙業界では、出陣式に一定の参加者を集めることで陣営の勢いを示し「勝てる候補」という印象づけを有権者に対して行うことは効果があると考えられています。
通常は選挙事務所の前か駐車場などの空きスペース、駅前、市役所前などで行うのが一般的です。
近くに民家がある場合は、事前に朝から大きな音量を出す旨をお詫びしておきましょう。
しかし、出陣式の告知は「事前運動の禁止」に問われる可能性が高く、多くの人数を集めることが難しくなっています。
「内部事務連絡」として、後援会幹部や推薦をいただいている政党・企業・団体、当日お手伝いいただくスタッフなどの「特定された少数」に対して通知を送ることは、直ちに違反には問われません。
ただし、あくまでも「事務連絡」です。
「◯◯を市議会議員へ当選させよう」などの働きかけの文言が入ると違反になる可能性が高まりますので、場所や時間などの連絡事項を書くだけにしてください。
地域によっては、1,000人の後援会員がいる場合、全員にはがきなどで出陣式を告知している陣営もありますが、郵送物は事前運動や文書違反に問われる可能性があるため控えた方が無難です。
また、ホームページやSNSで出陣式の告知を告示日前に掲載している陣営もありますが、ネットでの告知も違反に問われる可能性が高い行為です。
実際、平成24年12月の桑名市長選では、告示前に自身のブログなどに出陣式の案内を掲載したなどとして、桑名署が伊藤徳宇市長を公職選挙法違反の疑いで津地検四日市支部に書類送検しました。(ちなみにこちらのケースでは、のちに不起訴処分(嫌疑不十分)となっています。)
このように出陣式の告知には制限が多いため、出陣式に無理な動員は行わない陣営もあります。
ポスター貼りのために集まってくれた方々や、事務所のお手伝いに来ていただいた方々に対して候補者が第一声を行うのみというケースも少なくありません。
このように出陣式を最低限にとどめ、速やかに街頭宣伝活動に出るのも良いでしょう。
また、告示日が平日の場合は朝から集まっていただくことが難しいため、告示日の夕方に出陣式を行う陣営もあります。
出陣式を行う場合は、参加者の方々にお名前や連絡先を記入していただく芳名帳を用意しましょう。
選挙期間中の電話かけや、当選後の後援会拡大にも役立ちます。
政党の公認・推薦を受けていたり企業団体の推薦を受けていたりする場合は、政治家や企業団体の役員などが出陣式に参加することになります。
受付は必ず来賓用の窓口も用意しましょう。
司会は車上運動員(ウグイス嬢)にお願いするのが一般的です。
手作りの選挙戦であれば、事務局長やスタッフにお願いするのも良いと思います。
「がんばろう三唱」や「上げ潮三唱」で気持ちを引き締めよう
出陣式や個人演説会などでは、「がんばろう三唱」を行います。
これには「参加者と心を1つにして選挙戦を一緒にがんばろう!」という意味合いがあります。
もともと「がんばろう三唱」は、労働組合などが雇用・賃上げなどの目的達成を目指して行っていたものだそうです。
ですから保守系の陣営では「がんばろう三唱」ではなく、必勝を期しての「万歳三唱」を行う場合もあります。
最近では、当選前から「万歳三唱」を行うことへの抵抗感もあり、保守系であっても「がんばろう三唱」を行う陣営がほとんどです。
大河ドラマ「秀吉」の影響から「上げ潮三唱」を行ったり、自分たちのキャッチフレーズを活用して独自の三唱を作る場合もあります。
「がんばろう三唱」は、最初の発声を行う人が恥ずかしがらずに心を込めて大きな声を出すことで、参加者の気持ちが引き締まる効果があります。
出陣式だけでなく、選対会議や決起集会、個人演説会の締めにも使えますので、前振りのフレーズにも工夫するなどして活用しましょう。
YouTubeなどで検索すれば、実際の出陣式での「がんばろう三唱」の様子を見ることができます。
【ここまでのポイント】
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選挙運動用ビラの証紙貼り
届出が完了すると、選挙運動用ビラに貼る証紙も交付されます。
事前に印刷しておいたビラに、手分けして証紙を1枚ずつ貼っていきましょう。
段取りとしては、出陣式の間にスタッフの何人かは証紙貼りに回り、出陣式が終わったら貼れた分だけを選挙カーに積み込んで出発するという流れがおすすめです。
証紙の貼られたビラしか配布できませんので、100 枚単位で束にするなどして枚数管理を徹底しましょう。
新聞折込を予定している場合は、事前に新聞折り込み用の枚数を分けておき、早めに販売店に持ち込むことをおすすめします。
「証紙ビラの配布には制限がある!投票行動に結びつく配布のポイントとは」「証紙ビラの頒布が解禁!当選につながる作成方法とは?規定も要確認」では、証紙ビラについて詳細に解説しています。
あわせてご確認ください。
ホームページ・SNSの更新
届出が完了したら、ホームページやSNSも選挙運動用へと更新しましょう。
「候補者」の記載や、政党の推薦・公認などの記載、選挙の投票日や期日前投票のお知らせ、投票依頼なども発信できます。
日曜日が告示日の選挙で、ホームページなどの管理を業者に依頼している場合は、事前に告示日の対応をお願いしておきましょう。
演説会告知用ポスター(二連ポスター・連名ポスター)の撤去
政治活動期間中に屋外に掲示した演説会告知用ポスター(二連ポスター・連名ポスター)については、告示日中に撤去しなければなりません。
選挙ポスター貼りの終わった方にそのまま撤去作業をお願いしたり、掲示を許可してくださっている方に直接お電話でお願いして剥がしていただいたりなどの対応が必要です。
初日の反省会を
告示日初日はやることも多いため、特に新人の陣営の場合はポスター貼りで場所を間違えてしまったり、予定通りに選挙カーが運行できなかったりなどのトラブルが起こる場合もあります。
選挙運動期間は短いため、候補者や事務局長の方は失敗を引きずったり、感情的になってスタッフのミスを責めたりすることがないように注意しましょう。
残りの期間に最大限効率の良い活動をするため、すぐに反省会を行って2日目以降の活動に備えることが大切です。
告示日の翌日からは期日前投票もはじまります。
トラブルもなく幸先の良いスタートを切れた場合は、その勢いを持続できるように努めましょう。
告示日の主な流れ例
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いかがでしたでしょうか。ポスターやチラシを中心とする従来型の選挙・政治活動に加え、近年急速に重要性が増しているのがネット選挙対策です。
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