「政治活動をはじめよう」と決意したものの、「何からはじめていいのかわからない」という方もいるでしょう。
そこで本記事では、政治活動のファーストステップである「政治団体の届出」や「政治資金の集め方」について解説します。
活動するために知っておくべきルールや注意点、コツなども紹介しますので、参考にしてみてください。
※本記事は、選挙プランナー松田馨氏の著書『地方選挙必勝の手引(増補改訂版)』(2022年9月30日発刊)の内容を、許可を得たうえで使用・引用しております。
政治団体を届け出る
政治活動を始めるにあたって、まず政治団体の届出を行いましょう。
後援会の設立
最初に設立するのは、あなたの「後援会」です。
後援会はあなたがこれから政治家として活動していくための母体であり、支援者を集めていくという意味ではファンクラブに近いものとも言えるでしょう。
後援会を設立する場合のポイントをいくつかご説明します。
政治団体設立の手続きは、主たる事務所所在地の都道府県選挙管理委員会で行うことになっています。
政治団体設立届の用紙は、各都道府県選挙管理委員会のWebサイトからダウンロードすることが可能です。
郵送による届出はできませんが、平成22年1月から、総務省の政治資金関係申請・届出オンラインシステムを利用することにより、電子申請による届出も可能となりました。
ただし、あらかじめ利用申請を行っていただく必要があります。
手続きが煩雑だと感じられる方は、都道府県選挙管理委員会に出向き書類を提出しましょう。
政治団体の設立届は、その組織した日、または政治団体の要件に該当した日から7 日以内に届出をしなければならないとされていますのでご注意ください。
政治団体にも様々な種類がありますが、地方選挙に立候補をお考えの皆さんに関係するのは、「政党」や「政治資金団体」以外の政治団体を意味する「その他の政治団体」という種類になります。
「その他の政治団体」の設立届出に必要な書類は、
- 自治体が発行している政治団体設立届出書類
- 規約(会則・綱領等)
です。
規約とは、その政治団体の活動目的、組織、運営に関して定めた文書です。
後援会規約の場合は「後援会として特定候補者を応援する」という内容になります。
以下が書類の書き方のサンプルです。
届出用紙は都道府県の選挙管理委員会のページからダウンロードできます。
規約例も掲載されていますので、色々参考にしながら自分なりの規約を作成しましょう。
資金管理団体とは?後援会の届出と同時に指定するのがおすすめ
政治団体には「資金管理団体」という規定があります。
資金管理団体は、新たに別の団体をつくるのではなく、届出をした政治団体に対して「資金管理団体」という帽子をかぶせる(指定をする)ものです。
寄附の制限が緩和されるなど、政治資金規正法上の様々なメリットを受けることができますが、1人の政治家につき1団体しか指定することができません。
後援会とは別に政治団体を届け出て、その団体を資金管理団体に指定すると、2つの団体の会計報告をしなければならなくなり、事務が煩雑になります。
後援会の届出をする際に、「政治団体届出書類」「規約」と一緒に「資金管理団体指定届」も提出しておくのがおすすめです。
ちなみに、「政治資金団体」という団体もありますが、これは国政政党に関連する団体ですので地方選挙では関係ありません。
資金管理団体の指定届を提出する場合、政治団体の代表者は候補者本人である必要がありますので、代表者欄についてはあなたの名前を書くことになります。
そして、会計責任者についてはご家族か、選挙を本気で応援してくれる友人など信頼できる方にお願いしましょう。
会計の代行者については、候補者が兼ねることができますので、候補者ともう一人分の名義だけで政治団体を設立することができます。
こうして後援会を設立することで、後援会員を募集することができるようになります。
よく「後援会長」という役職の方を、届出書類の「代表」欄に記載しなければならないという勘違いをされる方がいらっしゃいますが、会長は団体内部の役職ですので届出には関係ありません。
政治団体を設立すると、政治資金規正法上の規定により、毎年1月から12月までの政治活動にかかった費用等については「政治資金収支報告書」を当該選挙管理委員会に提出することが必要になります。
2023年4月の統一地方選挙を想定した場合、例えば2022年10月からあなたが政治団体を作り、活動を開始した場合、2022年の12月までの政治活動にかかった費用は2023年の3月末までに政治資金規正法に則って報告をしなければなりません。
4月が選挙戦の本番であることを考えると、3月に慌てることがないよう早めに準備をしていくことをおすすめします。
政治資金収支報告書についての詳細は後ほど第5章でご説明します。
政治団体の名称についてのルール
名称については、すでに存在する政治団体と同じ名称の政治団体を作ることはできません。
また、事前運動にあたるような名称、例えば「勝田とおるを市長にする会」なども採用できませんが、それ以外は比較的自由につけることができます。
以下のように、あなたの名前を入れた団体名にするのが一般的です。
- 勝田とおる後援会
- チームかつた道子
- 勝田とおるサポータークラブ
- かつた道子を育てる会
また一方で、例えば田中角栄元総理の「越山会」や小沢一郎代議士の「陸山会」などのように、候補者名ではなく地域に由来した漢字三文字の名称や、「○○市地域経済研究会」など候補者の名前を出さないものもあります。
後援会の名称による有利・不利はありませんので、あまりに悩むようなら一番わかりやすく一般的な「名前+後援会」がおすすめです。
なお政治団体の名称は、選挙管理委員会異動届の書類を提出することで後からでも変更が可能です。
【ここまでのまとめ】 政治活動を始めるにあたって、まず政治団体の届出をすること。それが「後援会」となる政治団体にも様々な種類があるが、地方選挙に立候補をお考え方に関係するのは「その他の政治団体」という種類資金管理団体の指定届を提出する場合は、政治団体の代表者は候補者本人である必要がある |
個人献金を集める
後援会を設立したら、政治活動に必要な資金を集める活動をはじめます。
口座の開設
まず、銀行や郵便局で政治団体の口座を開設しましょう。
政治団体は一般的に任意団体に位置付けられるので、銀行には「任意団体の口座を開設したい」と伝えるとスムーズに進みます。
口座開設には、
- 政治団体届出証明書
- 団体の規約
- 代表者本人確認書類(免許証、保険証など)
- 代表者以外の免許証や保険証などのコピー
- (窓口に来た人が政治団体の代表者ではない場合)
- 政治団体届出と同じ印鑑(口座に登録する印鑑)
- その他(銀行問い合わせ時に必要と言われた書類など)
が必要です。
口座開設の詳細は各窓口に事前に確認をした上でお手続きください。
個人献金の依頼
口座を開設したら、後援会リーフレットや政治活動用ビラ、ホームページ等に個人献金のお願いを掲載しましょう。
また、ミニ集会等で個人献金の申し込み用紙や封筒などを手渡ししてお願いをするといった方法もあります。
日本では寄附文化が根付いていないため、なかなか個人献金は集まりにくいのが現状です。
ただ、まったく集まらないということはありません。
寄附をお願いする際には「なぜその寄附が必要なのか」を丁寧に説明すると効果があります。
例えば「ビラをこの地域に配布するためには30万円が必要です。もし後援会の皆様から30万円の寄附をいただければ、あともう5万枚のビラを配ることができます。どうか私に力を貸してください」など、個人献金によってどんなことができるようになるのか、それによって大きなメリットがあることをできるだけ分かりやすく伝えることが重要です。
三バンの項にも書きましたが、ある程度、後援会ができあがって運動が盛り上がりを見せてきてから、個人献金の依頼をする方が効果的です。
個人献金については年齢制限はありませんので、未成年者からの寄附を受けることもできます。
ただし、匿名や他人名義の寄附、外国人からの寄附は禁止されていますのでご注意ください。
個人献金に関する注意点
個人献金に関しては、以下の点に注意が必要です。
- 個人献金の上限額は1団体につき年間150万円、トータルで1,000万円
- 年間で5万円を超える(50,001円以上)の献金をすると、寄附者の住所・氏名・金額・職業・寄附をした年月日が政治団体の収支報告書に掲載され公開される
- 匿名や他人名義の寄附、外国籍の方からの献金は禁止
- 一部、寄附金の控除が受けられる場合がある
もしも匿名や他人名義の寄附、外国籍の方からの献金があった場合は、政治団体は受け取ることができず国庫へ返納となります。
また、国会議員(衆議院議員、参議院議員)、都道府県の首長及び議会議員、政令指定都市の首長及び議会議員の政治活動に対して個人献金をした場合、2,000円以上のものについては寄附の控除(税制上の優遇措置)を受けることができます。
ただし、その他の市区町村の長や議会議員への寄附は控除の対象にはなりません。
寄附金控除を受けられる方は、5万円以下の寄附であっても、その詳細が収支報告書に掲載され公開されます。
寄附の量的制限の概要
政治資金パーティーで資金を集める
政党要件を満たした国政政党(自民党、公明党、立憲民主党、共産党など)か、その支部、または政治資金団体であれば、企業・団体から政治献金を受けることができます。
しかし、政党に属さない無所属系の政治家は、企業・団体から政治献金を受けることが禁止されているため、資金援助を受ける場合は、政治資金パーティーという手段を使うのが一般的です。
例えば橋下徹氏は、国政進出前の2008年からの3年間で、「橋下徹後援会」で政治資金パーティーを複数回実施し、約8,000万円弱の収入を得ています。
実際にパーティーを運営したり、パーティー券を販売することの負担は大きいのですが、経営者の友人・知人がいる場合は、個人献金よりも、会社として購入できるパーティー券が望まれる場合もあります。
政治資金パーティーを行う場合は、案内状やパーティー券などに「この催物は政治資金規正法第8条の2に規定する政治資金パーティーです」と記載しなければなりません。
政治資金パーティーのパーティー券は会社の経費になる?
事実認定によって変わるのですが、厳密には政治資金パーティーのパーティー券を購入した費用は、政治資金パーティーの対価として支払うものであることから、寄附金には当たらないとされています。
そのため、他の参加者と名刺交換を行ったり、事業に関する情報交換をするなど、いわゆる親睦を図ることを目的にパーティー券を購入し、実際に参加した場合は「交際費」に該当するでしょう。
ただし、パーティー券の金額はそもそも高額であり、実質的には寄附という側面がありますので、中には交際費等としては認められない場合もあります。
パーティー券代金の処理について問い合わせを受けた場合は、上記の内容を説明し、その会社の税理士に確認してもらいましょう。
政治資金パーティーと会費制集会との違い
500円の会費でお茶とお茶菓子を出すミニ集会や、3,000円の会費で朝食付きの懇親会を行うなどの場合は、政治資金パーティーには該当せず、単なる会費制の集会になります。
大きな違いは、利益を出すことを目的にしているかどうかです。
政治資金パーティーは「政治資金を集める目的で」開催されるものですから、国会議員の場合はパーティー券1枚が1万円〜2万円で、経費は3割〜5割弱に抑えるのが一般的です。
会の参加費が実費に近い金額であれば、利益が出ませんので政治資金パーティーには該当しません。
反対に、無料で食事を振る舞ったりすると「政治家の寄附の禁止(公職選挙法第199条の2第1項、第2項)」に該当しますのでご注意ください。
ネット献金も活用しよう
2019年12月から、「選挙ドットコム」が「カンタンネット献金」というサービスを開始しました。
選挙ドットコムは、月間で最大約2600万PVを誇る日本最大の選挙情報サイトです。
「カンタンネット献金」では、選挙ドットコムのサイト内にある政治家ページから、クレジットカードを使って個人献金をすることができます。
国会議員や首長だけでなく、地方議員も含めて全ての政治家(立候補予定者も含む)が利用できます。
サービスの利用にあたって月々の固定費は不要で、決済手数料は僅か5%です。
クラウドファンディングの手数料が大体10%〜20%であることを考えると、ネット献金は手数料が安いことも魅力です。
今後はこうしたネット献金の利用が広がっていくと予想されます。
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